2019.03.03 05:56少し違う惑星の話 世界は今日も曖昧である。 鉄笠の位置を直すと、雪解けの水が指に絡む。雪が止んで少し経つが、今は既にうんざりするような暑さになっていて、外気は肺を蝕んだ。ここでは急な気候の変化など日常茶飯事であるが、特に「ころころ棚」と呼ばれる、切り立った一枚岩が階段のように並ぶこのあたりでは、常に天候が「ころころ」と変わる。曖昧だなんだとは言いつつも、気温をしっかりと感じ取れるこの体を持つ以上は、これまたしっか...
2019.03.03 05:52ケノラ書記長の手記 ツェライは今日も乾いた風が都市の端から端まで吹きすさび、泳ぎ疲れた観光客の体を乾かしている。このツェライが単なる行政都市であるところから、観光産業を興して世界に知れ渡る都市にしたのは私の功績によるところが大きいと自負している。24歳で党から除籍されてからも自棄にならず、多少の手荒い手段はあれど真っ当にやるべきことをこなし、33歳で党員に復帰した。歴代の書記長とは違い私兵すら持たない。※1 この国...